斜陽

ネガティヴ音大生の憂鬱

雑記 私のこと、彼のこと

 

暖かな日が続き、花粉が飛びまくっている今日この頃。

スギやなんやらに明確な殺意を抱きながらも暖かさには勝てずに無駄に外出をしてしまう。

風はまだ冷たいけれど陽だまりは本当に心地よく、ようやく冬の出口を見つけようとしている。

 

気がつけばもう、元旦から2ヶ月が過ぎていた。

もう遠い過去のことのように感じるけれど、まだ2ヶ月なのだ。

実技試験があったり、ちょっとしたオーケストラの本番があったり、新しいバイトの面接(思いの外ちゃんとしてた)があったり、また別のオーケストラの本番があったり。

なんだかこの短い期間のうちに多くのことがありすぎた気がする。

心が乱れて、呼吸が浅くなって、最悪なことにそんな無茶苦茶な自分に酔っていた。

 

 もっと落ち着いて、整然とした生活をおくりたいなぁと毎夜床につくたび思うのだ。

自分は何がしたくてどう生きていきたいのか、それを見失ってはいけない。

がむしゃらに色々なことに取り組むことは気持ちがいいことだけど、今の私にはそんな時間はない。

残された時間は経ったの一年。

静かに、そして着実に、未来への道を切り開かなければ。

そんな風に意気込む強い私を牽制するかのように、最近また新たな私が生まれた....恋に酔った弱い私だ。

 

 

クソ引きこもりニートの私にとって、人との関わり合いはストレスであり、恐怖でしかない。

それでも昔からずっとそうだった、と言うわけでもないのだと思う。

 

私は上に兄が2人いることや体格がいいこともあって小さな頃は本当に男子として育てられた。

両親がスポーツ好きで、兄妹皆そちらの方面の教育を受けたこともあった。

そんなこんなで周りは男子ばかりだったし、そのことに違和感は全くなかった。

外で走ったりボール遊びをしたりするのが大好きだったから女子とはあまり交流を持たなかった。

というかもてなかった、どうやって話せばいいのか分からないし、女子特有のあの陰険な雰囲気に馴染めなかったのだ。

母親も男勝りな性格だったので何かアドバイスをされることもなく、ただ自分は男子と共に好き勝手して遊んでいた。

 

小学校に入ってからは何となく前ほどは男子と遊ばなくなったものの、やはり女子との距離は縮まらず、結果友達が少なくなった。

その頃の私はなぜか特に男子に対しての正義感がとても強かった。

間違っていると思うことに対しての拒絶感が本当に強くて、こいつは間違っていると思うと徹底的に攻撃していた....物理的に。

本当にいけないことを当時の私はしてしまっていた。

どんなに間違いがあったとしても、暴力が許されることなんてないのに。

どうして感情の発露を言葉に代えられなかったのか、今思い出しても恥ずかしくて情けなくて悲しくてたまらない。

本当に全員に会って謝罪したいくらい、私は酷いことをしていた自覚がある。

 

まぁそんな感じで、暴力で何かを済まそうとし、ADHDの感じもあった私は、中学校に上がってから相当浮いた。

暴力なんていうのは初日に一回教室を騒つかせてしまって以来絶対に止めようと思えたが、友達ができなかったのが1番辛かった。

仲の良かった友人とはクラスが離れ、声をかけ続けた子には徹底的に無視をされ、当時はなぜか分からなかったけれど多分小学校の時にバカなことをしていた噂なんかが男子に流れて休み時間のたびにからかいにやってくる。

ついでに当時カーストの上の方にいた女子からスカートが長い長いとその子の前を通るたびに笑われた。(ベルトを初っ端に失くして短くできなかった)

悲しくて辛くて、どんどん性格は暗くなってその事をまた笑われる。

 

全部根本的に悪いのは私なのだと今でも思う。

声のかけ方がおかしかったから多分からかわれていると思わせてしまったんだろうなとか、男子に目をつけられたのも小学生のバカな私のせいだし、ベルトを失くしたのも不注意のせいだった。

でもその時は、本当に辛くて、どうしたらいいのかなんて全く分からなくて、悲しくて悲しくてたまらなかった。

 

人と違うことが悲しかった。

だからできるだけ目立たずに生きていこうと思った。

人と同じ事をして、同じ事を考えて生きていこうと。

女子の中で生きていく為には男子との関係はない方がいい。

そうでなければ今度は、女子としての立場も失ってしまうから。

そうした歪んだ努力は身を結び、どうにか地味な中学生らしい女子になれたと思う。

 

でもいまでもそのしこりは残っていて、未だに男性が怖いし、何か間違ったことをしてしまえばすぐに人に嫌われると未だに思っている。

人が嫌いなわけではないけれど、人が好きだからこそ、嫌われることが怖いのだと思う。

 

そう、私は人が好きなのだ。

女性といることが好きなように、男性と接することも好きなのだ。

人を好きになりやすいし、何かあればすぐに懐いてしまう。

でもこの人と私が釣り合うはずなんてないと二度足を踏んで、勇気も出さず他人のまま終わるのだ。

それはなんて、悲しいことなんだろうか。

 

恋をするのが好きだ。

誰かを好きになると本当に自分が自分じゃなくなってしまう。

起きている間はいつも綺麗になりたいと考えるようになるし、釣り合うように努力をする。

世界がまるで輝いて見えるようで、何をするにも楽しくて仕方なくなる。

恋に溺れるというのは本当にこんな感じなんだと思う。

心地のよい温度の湯船の中で全身どっぷり浸かってしまうような快感。

気持ちが良くて仕方がない。

 

私は多分、そんな自分に酔っているのだ。

これでは恋がしたいのか、本当に相手を好きになりたいのか分からない。

ちょっと仲良くなって、相手を知れば知るほど嫌悪感がどこからか湧いてくる。

食事に行く、一緒に歩く、話をする、そんな行為の中で感じ取ってしまう人間臭さのようなものが嫌で嫌でたまらなくなって、もういいや....なんて諦めてしまうのだ。

 

本当に失礼なことだと思う。

相手だってこんな仏頂面の大女の為に貴重な時間と労力を費やしたくなんてなかっただろうに....。

そう思うとますます人と関わりたくなくなったり........なんだこの深すぎる闇は.....。

 

もう本当に泣きたい。

男性と接する瞬間真顔になってしまったり嫌そうな顔をしてしまうのが本当に嫌だ。

違うのに、めちゃくちゃ嬉しいのに、あなたと話せるこの瞬間をどれだけ夢見たことか。

こんな事を話そうとか、あんな事を聞いてみようとか、沢山考えたのに、全部どっかに置き忘れてしまったかのように、何も出てこない、無言の時間が辛すぎる。

あぁほらそうしたら、相手も「なんだこいつ」みたいな表情をするでしょう。

私だってそんな事されたら不快でしかない....バカすぎる私本当無理....

 

私と話す時より、あの人と話す時の方が幸せそうだななんてのを感じ取ってしまったらもう終わり。

それからはブラック嫉妬期に突入。

とりあえず自分の不出来は他に置いといて、誰かに嫉妬の念を抱き続ける不毛な期間。

めちゃくちゃ無駄、なんの得もない。

ここまで来てしまうとだいぶ長い事引きずってしまうので早いとこ諦めるのが吉だ。

まぁ大抵、知らぬ間に彼女ができてたりしてふぁーって終わる。

 

もう嫌なんだこんな私、早くこんな過去の自分に縛り付けられたままなんて状況から脱却したい。

男性とも勿論女性とも分け隔てなく接して生きたいし、もっと自分らしくいられるような恋をしたい。

できれば結ばれたいし、なんなら結婚してしまいたい。

相手を性別で判断するなんて古臭いこともうやめたい....

 

 

そんなバカな私が最近好きになった人はヴィオラがとっても上手な人で、もっさりした前髪とメガネが可愛い人。

背が小さくて、色白で、華奢で、眠そうな目とすっと通った鼻と小さな口が本当に可愛い。

あまり表情が変わらないし、いつも私が見かける時は1人で、でもそれが苦には全く見えなくて、好きだからそうしてるっていう感じがめちゃくちゃ好き。

1人でふわっとやってくる、まるで春風みたい。

彼の周りだけ空気が澄んでるような気もする。

私とはまるで吸ってる空気が違うんだろうな、と思う。

だってなんだかキラキラして見えるし、綺麗すぎてたまに眩しいくらいだから。

 

表情が変わらないと言ったけれど、ヴィオラを弾くとまるで人が変わる。

めちゃくちゃすごい、もうなんか言葉にできないくらい上手い。

オーケストラで弾いていても、彼の音はすぐ分かる。

別に変に目立っているという訳じゃなくて、トップとして皆んなを導いてる感じ。

しなやかで、弦の人にありがちな無駄な荒々しさもなく、透き通った音。

ソロなんか弾くとオケと離れるんじゃないかってくらいスケールの大きい音楽を魅せるんだけど、それでもちゃんと破綻しないように上手く調整してて、伴奏をしていてこんなに心地のいいことはないと思わせてくれるほど。

 

正直ヴィオラは特別好きという訳でもなかった。

でも、彼のあの深い音楽に触れてしまってからは、ヴァイオリンなんかを聞いていても何か物足りない気分になってしまうようになった。

もっとあの、お腹の奥の方に響くような音が欲しいと、多分思っているんだと思う。

私の楽器とは音域も音色も似ているから、ますます好きになってしまった。

 

弾いている時の姿もいい......どちらかと言うと猫背な彼だけど、楽器を持つとスッと背筋が伸びて、自然なフォームで決して力んだりせず、楽器に体を委ねているような感じが無茶苦茶美しい。

楽器に体を持って行っている、のではなくて寄り添っている感じ、楽器もそれに答えているからなお美しい。

本当に音楽を楽しんでいるんだろうなぁと思わせるのもいいと思う。

本当に上手い人じゃなきゃ、あんなに余裕を持って演奏できない。

 

最初は、よく目が合うなぁと思って、なんとなくいい気分になって、気がついたら好きになっていた。

バカだから、ずっと後輩だと思っていたのだけど、普通に同学年、誕生日も近くて、こんなに差があっていいのかと思うほどだ。

落ちこぼれの私が、彼とどうにかなるなんて思っていないけれど、こうして恋の華やかな心地に酔えるのは最高に楽しかった。

遠くからなんとなく眺めて、抱きしめたら胸のあたりに顔がきそうだなとか、柔らかそうだなとか、一緒にいたらどんなだろうとかぼんやり考えるのがいい。

まるでアニメや漫画の世界の推しを眺めているような気分だ。

私だけの彼を無意識のうちに組み立てている、そんな感じ。

 

私は彼が好きだ。

でも多分、彼は私のことを気にも留めていないだろう。

一度だけ、打ち上げの時に先輩方に背中を押して頂いて話しかけたけど、まるで出待ちのファンから逃げるような感じの歩き方だったし、なんだかよく分からないけど笑顔でお礼を言われて握手をしてもらっただけだ。

その時私は確かに感じた。

彼の世界に私はいないんだと。

悲しかったけど、あそこまであっさりフラれるとなんだかあんまり痛みもなくて、「あれなんか清々したな」って感じだった。

うん、こういうのもいいなっと新しいフラれ方を覚えた瞬間だった。

 

今でも彼が好きだし、でもそれは付き合いたいとかそういう邪な気持ちではなくて、なんだろう、俺の嫁って感じがする。

彼女ができたらそりゃ悲しいだろうけど、それはそれ。

彼には彼の世界があるように、私には私の世界があるのだと信じたい。

そりゃあなんだかんだ言うけど、付き合えたらいいなぁっていうのは本当にちょーーーーーーっとだけだけどある。

多分数字にはできないくらいめちゃくちゃちょっと。

そういう要素は女性なら誰しも必ずあるものだと思うから否定しないし執着しない。

こういう不思議な体験をさせてくれる彼がますます好きになったのも事実。

一ファンとして、演奏家としての彼を応援したいと思っている。

 

そして、どうにかしてちゃんと話せるようになれればいいなとも思う。

ちゃんと目を見て、自然に、自分で自分をコントロールできるようになりたい。

あぁこんな風に思わせてくれる彼がやっぱり好きだ。

またいつか、彼と同じ舞台で同じ音楽を奏でられますように。