斜陽

ネガティヴ音大生の憂鬱

大事にされるってどんなこと

 

肌寒い日々から一転、まるで小春日和な今日。

寝不足の私にとってはまぶしいばかりだ。

 

 

昨日は初バイトを2件こなしてきた。

朝私にしては早起きして満員電車に飛び乗りお昼頃までずっとオフィスを周りお弁当を売りまくった。

日頃は中々歩かないような都会をウロウロできるし気楽で楽しい。

しかし台車を押すので腰が痛くなるし結構足にくる。

まぁいいダイエットだと思い頑張ったら午前。

 

それが終わって家に帰って少し寝て、また夜のバイトへ。

夜は客層のいい所謂キャバクラ。

初めてのことで大変だったけどなんとかなった、と思うようにしよう。

そうしないとメンタルから先に死ぬ。

終電前には返してもらったけれど電車が遅延していたので結局終電を逃す。

深夜バスがあるのでそれに乗ることに。

そのことをあの日からほぼずっとLINEを続けているキャットに愚痴ると「じゃあ(うちに)くる?」という。

即座に「こない」と返した私をどうか褒めてほしい。

本当は全部放り投げて会いに行きたかったけどさすがに授業をサボりすぎてるし、メイクポーチも何も持ってきていなかったから気合いで断ったんだ。

まぁもっと本音を言ってしまえば、彼にもっと求められたいというか、大事にされたいというか、ちゃんと時間を作って会ってほしいから明日にしてほしいななんて思ったからで。

 

「授業だから無理なの、折角なのにごめん、いつも金曜日の深夜だから寂しい、また今度ちゃんと時間をとってほしい」と順を追って本音を伝えたらまた謝罪がきた。

違う、私はそんな言葉が欲しいんじゃない。

じゃあいついつはどう?ってそういう確かな約束が欲しいだけなのに。

一般的にセフレはさ、突発的に会うばかりだからいつって約束をしないものなんだってさ。

本当そうだよね、悲しみが深い。

 

そんなこんなで2時くらいに帰宅して、朝練もしなきゃだったから7時に起きて、そのままさっきまで授業だったから今めちゃくちゃ眠いんだけどなんとなく家に帰りたくなくて喫茶店でコーヒーをすすっている。

いつか渋谷で香水を試しにつけた時の残り香がコートについていてそれがまた煩わしくもある。

ユニセックスなムスクの香りだ。

なんとなくだけど私以外の誰かにつきまとわれているような、そんな感じがする。

でも、今はそれぐらいがちょうどいいのかもしれない。

誰か違う男の人に抱かれているような心地だから、彼じゃなくても大丈夫だとそう思える気もする。

香りと、コーヒーと、ケーキと、とびきりおしゃれな小説、それからセンスのいい音楽が私をトリップさせてくれる。

タバコや薬なんかしなくても最高に気持ちよくなれる、最高。

あーいい趣味見つけたかも、よかった。

彼がいなくても、ちゃんと楽しくなれるんじゃん。

 

 

昨日も今日も彼が、今日の夜、誘ってくれたらいいのに、なんてことをずっと考えていた。

バカらしいけど、少しでも大事に思ってくれるなら、私を優先して欲しいなんて、欲深いことで頭をいっぱいにしていた。

 

でもまぁLINEで地元から遊びにきてる先輩と会ってくるというので、なるほどそれは大事にしなきゃと思った。

理解できても胸は痛む。

土日はきっと、彼といられると頭のどこかでずっと思っていた。

 

都合のいい女にはなりたくない。

求め、求められる快感を仮初ではあるけれど味わってしまったから。

どうか大事にしてほしいと執拗に願ってしまう。

けれど大事にする、大事にされるってどんなことなんだろう。

実際に、愛する人に大事にされた覚えのないわたしにとってそれは結構な難問だ。

お金をかけて、全ての予定を相手の為にキャンルしたりして、お姫様扱いする....感じ?

 

いやそれって私が一番嫌なやつだ。

自分のために相手の人生をおかしくしてしまうの?それって嬉しいのか?

もっと違う意味で大事にされるって感覚を味わいたいな....

 

 

そんな風に鬱々と考えている間にコーヒーは冷め、冷房で体は冷え切ってしまった。

冷えと睡魔と空腹は人をだめにするからな、そろそろ出よう。

 

 

彼に授業をサボっていると話をしたら、しっかりしろと言われた。

お前に言われたくないと思ったが、あぁでも確かにと思った。

自分の為に相手の大切なものを犠牲にしておかしくさせるのは心地よくないよな。

分かるよ、私だってそうだもん。

やっぱりさ、相性は悪くないんだよ私たち。

ただタイミングが悪かっただけなんだ。

もう少し早くあなたに出会えていたなら、きっともっと幸せになれたのにね。

 

なんて、私の中の彼に言葉をなげれば、きっと悲しそうな顔をしてまた「ごめんね」と言うんだ。

 

 

 

 

 

 

ごめんね?

本当にあなたはずるいよ。

 

 

あれはその、いつか見た日々

 

このブログを始めて、今日でちょうど1年らしい。

私はこの1年で何か変われたのだろうか。

考えるとおセンチになるのでやめよう。

 

 

昨日は、バイトの面接を2つ受けてきた。

昼と夜で時間があいていたので色々ぶらぶらして本を買って読んだらコーヒーをすすったりした。

私にとってはそれはそれは有意義な時間でハッピー全開だった。

 

なんとなく日にちも開いていたし今日ぐらい良いだろと思っておっぱいキャットによかったら電話しようとLINEをした。

酷い話だ、あれだけもうやめるだの騒いでいたのに。

ご飯食べてからならいいよとのことだったので本の続きを読んで待つことにした。

有名な恋愛小説で、短篇集だから読みやすい。

感情移入しまくってだいぶ盛り上がって、あぁやっぱり私のしてたことは小説にしたら間違いを犯してることになるんだなぁなんて思った。

 

心が鈍くなっていたのかもしれない。

こうやって色々な人の気持ちに寄り添うと、見えなかったものが見えてくる気がする。

うん、やっぱり読書っていいな。

なんて思いながらもう2時間も待っていた。

いやおかしいだろ何食ってんのよ、蟹?

どうせ彼女と電話してんだろとか思ってTwitterに愚痴りツイートをしているとちょうどキャットからのお待たせしました〜とのLINEがきた。

 

 

久しぶりに聞いたキャットの声は暗かった。

あのアホみたいなもしもしじゃない、だいぶじめっとした雰囲気だった。

何かあったのか聞いても何でもないというしいつものキレがほぼない。

若干心配にもなったけどまぁなんとなく分かっていたから、意地悪く彼の口から本心を言わせたくなった。

この葛藤は私だけじゃないと言って欲しかったから、気をきかせることはしなかった。

 

たわいもない話をして、そのうち彼方が痺れを切らせて聞いてきた。

「距離を、とろうとしてるの....?」

その今にも消え入りそうな声にすごくドキッとした。

そうかやっぱりこの覚悟は彼にも伝わっていたんだなぁという感じ。

少しの優越感と、しまったバレた、という訳のわからないハラハラが胸をぐるぐる回って少し苦しくなった。

彼の問いに答えることもなく、私は私の気持ちを少しずつ話した。

 

メンヘラに近づいていた私にとって、彼の「甘えられる人を早く見つけた方がいい」という言葉は効いたということ。

もうやめようと思ったこと。

スッキリしたこと。

 

そんなことをポツポツ話す私に彼は静かに聞いていた。

そして「ごめん」とも。

ごめんはいらないよと何度言っただろう。

そういうところが煮え切らなくて嫌いだ。

 

あまり覚えていないから順番が異なっているかもしれないけど、まぁ適当に。

 

彼が「何を言っても傷つけてしまうかもしれないけれど」と前置きをする。

心拍が上がる私。

好きだよと漏らす彼。

きっとそれは新幹線に乗って帰省してしまえば一瞬でなかったことになる話だよとできるだけ軽くかわそうとする私。

不服そうな彼が印象的だった。

私もだよ、と言えばすぐにごめんねと言うくせに。

じゃあなんて返して欲しいんだよ、私には分からん。

 

彼がだいぶ拗れてしまっていたので、本音を言ってみようと思った。

だいぶ好きだけど、入れ込まないように気をつけてスイッチをオフにしていた。

彼女の話も聞いているとどんどん嫌いになってきて、本当に嫌だった。

あなたにとってみたら、誰でもいいから彼女の代わりになる人を甘えさせてくれる人を欲しているということになるんだろうけど、私にとってみたらあなただから一緒にいたいと思えたし時間を使いと思えた。

責めるような言い方しかできなくてごめん。

悪いのはどう考えても私なんだ、だからそこまで気にしないで、気楽にいて。

 

そんな風に呪いに近い言葉をボソボソ話して。

それで彼は「自分の気持ちが分からない」と言いやがった、出たぜ。

「誰でもいい訳じゃない」「俺にとって君は大切な人だよ」

よくそんなセリフ言えたもんだぜ。

いや社会人って怖いよな、遊び慣れてる感すげぇ。

 

だってさ、私がその言葉本気にしたらどうする気だったのって話よ。

怖いわ、永遠二番手とか死にたくなるわ。

よかった、この話をする前にお花ちゃんと出会っておいて。

話半分で聞ける。

 

いやいやそんなの気のせいだよ、ただの秋のセンチメンタルのせいだよ。

私は彼女には勝てないし、あなたを幸せにするのも彼女だから、そんな風に言うなよ。

そんな風に思ってもないことを言えた私をどうか抱きしめて欲しい。

 

以前、カラオケから電話をかけてきた時、結局3人でらしい。

ははーんやってはいなかったんですな。

その時、淫乱女に「今彼女以外の子と体の関係を持ってて、最近気持ちが傾きつつある」みたいな話をしたらしい。

というのを、私に話すのか。

アホかよ、だからなんだよ。

その彼女以外の子って言葉がまず嫌いなんだわ、無理、くそだな。

 

なんかもうどうでもよくなってきた。

本当は昨日、ちょっとハッピーになって寝たんだ。

言いたいこと言ってスッキリしたし、なんだかんだ彼も少なからず私のことで悩んでたんだと思うと、私だけじゃなかったんだって思えたから。

でもさ、いざこうやって文章にしてみるとクソだよね。

 

いや〜難しいね、恋って本当に見苦しい。

その時は無我夢中で気づかないけど、そうとうダサいことしてるわ。

そういうものから解放されたいけど、多分無理だな。

もういいや、とりあえず地に足つけて色々頑張ろう。

 

オッケー!ファイトー!オー!!

ミッドナイトブルー

 

真夜中の、耳をつくほどの静寂が少し苦手だ。

全てがこの世から消えてしまったのか、なんて考えてしまうから。

うんざりするほどの日常も、ついうっかり全てなかったことになってしまうほど世界は脆い。

青みがかったその闇夜は、もしかしたら己を映す鏡なのかもしれない。

私のこの胸にあいた穴はそう錯覚させるほどの虚無があった。

 

 

昨日はふらりと立ち寄った喫茶店でブログを書いた後、コーヒー豆とドライフラワーを買って帰り、なぜかそのまま勢いに任せて部屋の掃除を爆速で済ませてしまった。

カフェインが効きすぎたのか、お金を使ってハイになったのか、丁寧な生活が手に入りそうな気がしてテンションが上がったのかは分からないけれど、まぁいいことなのであまり深く考えないようにしようと思う。

 

綺麗になった部屋にドライフラワーの微かな香りが彩りを添える。

なんかいいなぁ、ついでに買ったコーヒー豆もちゃんと使い切りたいなぁと思ったのでそのまま雑貨屋にダッシュ

この行動力、なぜこんな時にしか発揮できないのか。

ちなみに19時を回った頃のことである。

 

雨の中テクテク歩いて雑貨屋へ行き、ハリオのコーヒー器具類を買い、ついでに朝ごはんのパンと安くなっていたお惣菜も買った。

ルンルンで家に帰りできるだけ色々なことを丁寧に行って床に就いた。

お花ちゃんにLINEをしたら速攻で返してくれたし、その内容がまためちゃくちゃ可愛くて最高の気分で眠りについた24時半。

 

あまり覚えてないのだけどフワフワした状態で例の彼にLINEを送っていたらしい。

(彼っていうのももう飽きたから今度からおっぱいキャットと呼ぼう....おっぱいがでかい猫系男子である)

 

お前あれだけおっぱいキャットとは終わったんだって言っといて、本当にどんだけ根性ないんだんだよって感じだよね、知ってる。

それに返信があって、なんだかんだ知らないうちに寝てて、また25時半くらいにLINEの通知で起きた。

面倒くさいと思いつつも返信してなんだかんだやってたら「今カラオケなんだ〜友達の女の子(上司と不倫してる)に不倫相手と4人で飲みに行こ〜って誘われたんだ〜」的なLINEがきた。

 

正直超うぜぇしスワッピングする気か?って感じだし普通に頭沸いてて気持ち悪かった。

浮気仲間同士仲良くしようやってどういう話なのよ、酔っ払いの思考回路怖すぎ。

まぁその感じだと今てめぇはカラオケでその淫乱女と2人っきりってことだろ死ねやって思ってしまった。

 

苛立って陰キャには無理だねって返したら謎のごめんLINEである。

は?どうした?そんないつも謝らない奴がこんなことで謝るか?

 

ははーんてめぇ、さてはやってんな??

 

 やってなくてもやましい事があるんだろ、なら言ってみろよほら。

何だ?セフレに申し訳なる事なんてあるんか?あ?

なんだよほら、土日彼女と楽しんでたのに東京帰ってきたら急に寂しくなったんか?

月曜休みだったのに黙ってその淫乱女と遊んでたからか?

それともあれか?電話でてめぇが言葉のビンタ食らわした時の私の捨て台詞に今更ビクビクしてんのか?

いや本当にね、たかがセフレにそこまで申し訳なる事なんてねぇんじゃねぇですかねぇ????

距離を取れっていつもアピってんのはそっちですからね?

今更何で気を使う必要があるんですかー?????

 

眠くてイライラ気味で無理矢理LINEを終わらせたものの色んな思いが頭の中でぐるぐるして眠れなかった。

くそー!いい感じに1日終わる予定だったのにー!

なんでおっぱいキャットにLINE送っちゃったんだバカー!ってtwitterで愚痴りまくってたら急にキャットから電話がかかってきた。

は????となりつつも落ち着いて4コール目ぐらいでとってあちらからのもしもしを待った。

そしたらもう迷子猫かよみたいなごめんね〜みたいなこと言うもんだから、「は?かわいいかよ」ってなっちゃって.....。

かわいいけどこいつとはもう終わってんだと言い聞かせて興味のないふりをしていた。

 

内容はまぁ本当に薄くて、「ごめんね」だの「また来てくれる?」だの「好きだよ、キスしたい」だのそんなのばっかりだった。

捨て台詞が大分効いていたらしくて心配になった〜ってとこだろうか。

はいはいと適当に流してできるだけ早く切った。

 

すげぇムカつくのだ。

なぜ私が甘えようとすると拒んで現実を叩きつけてくる癖に、距離をとろうとするとイヤイヤするのか。

腹がたつのだ。

そっちは好きだ好きだと言いたいだけ言っておいてこっちがちょっと気持ちよくなるとすぐにごめんねというのか。

これが本当のマスターベーションである。

彼は私を使って自慰しているだけなのだ。

クソ野郎である。

私のことはダッチワイフとかしか見ていないのだ。

だから人形が勝手に動き出したら気持ち悪くなるし意思が宿るのを怖がっているのだ。

 

いいかてめぇよく聞けよ。

私は今22歳。

女性として、人生で一番綺麗な時期なんだそうだ。

何もかもここがピークで後は下り坂らしい。

そんな大切な時間をてめぇの為に使ってやってんだよ。

私だってそれ相応の覚悟を持とうと決めたんだ。

だったらてめぇも腹くくれや。

間違ってもごめんねで済ませようとすんじゃねぇ、分かったな。

 

 

 

そんなこんなで一夜明け、部屋の掃除をして色々スッキリしてた時、ふとキャットの方が頭をよぎる。

あーくそである。

部屋も私もすごく綺麗になって、いい感じに楽しくなってきたのに、なんであいつのせいでまた無駄に時間を使わないといけないんだ。

明日は何をするの?と聞かれて答えられなかった自分がやだったし、逆にやだ思う自分も嫌いだ。

 

なんだなんだまた前の私に逆戻りか?

いいや私は私なんだ。

自分の世界は自分でコントロールしよう。

なんてたって私にはお花ちゃんと言う素晴らしい推しがいるんだ。

まぁフラれたってそれはそれ。

かわいい子は世の中たくさんいるんだから気にすんな。

 

 

と言う感じで、今日は今から遺品整理的な名目でお掃除パート2をしたいと思う。

卒業したら引越ししなければいけないし、今のうちに入らないものはガンガン捨てて綺麗なお部屋で美しくなろうキャンペーンだ。

 

ミッドナイトブルーには負けないぞー!

頑張るぞー!おー!!

 

 

 

獣の恋

 

秋雨のこの時期は湿度がおかしくて好きじゃない。

乾燥して欲しいわけじゃないけれど、なんだか体がしんどくなるからきつい。

 

バイトをやめ、授業をやめ、時間がありあまっている.....

そんな時にふと思い出すのは彼のこと。

彼のために、何かを始めようとか、そんなことばかり考えている。

だいぶ虚しい。

私は私の人生を、歩むんじゃなかったのか。

 

 

思えばいつも、人生がうまくいっているときは誰かに恋をしていた。

彼のために、美しく生きようとこころがけていた。

中高生の時はそれが顕著で、二次元のキャラとの妄想をして毎日を生きていた。

 

そちらの方が上手くいくって分かってる。

だってそれは、もう1人の自分と常に会話することになるから、結果的にいい方向に進むんだ。

でも、なぜだか今はそれができない。

その為の努力が虚しいから。

彼との未来に悲しむばかりだから。

彼がいない時間は私にとって隙間でしかない。

それに、今更だ。

彼とはもう終わったんだから、自分らしく生きればいいのに。

 

....じゃあ例えば、誰かを意識して生活を整えながら生きるのは自分らしくないのか?

ただ三大欲求に任せて獣のように怠惰に生きることの、どこが自分らしいと言えるのか?

 

 

あー分からなくなってきた。

やっぱり一日家に篭ってるといいことないな。

毎日何かしらメイクをして外に出て、外の空気を吸おう。

今は内圧に殺されそうになっているだけで、本当の私はもっとこざっぱりしていて、なのに奥深い。

そういう自分を私は知ってるよ。

 

だから、誰のためでもいいんじゃない?

好きなことして、好きなことの為に生きてみよう。

獣の恋はそれからだね。

香り

 

秋の匂いが立ち込める11月。

季節の移ろいに心揺らすこの切なさが好きだ。

 

コートがなくては肌寒いくらいの今日、私は吉祥寺で迷子になっていた。

マッチングアプリで知り合った人と待ち合わせをしているのに全く見つからないからだ。

極度の方向音痴の私が馴染みのない駅で知らない人と会うなんて無理な話。

そこまでの満員電車でもだいぶ疲れていた私は帰るか否か決めかねていた。

 

頭をよぎるのはオトモダチの彼のこと。

今頃楽しくしているんだろうか、かの女と上手くやっているんだろうか。

そんなことを考えたらキリキリ胃と頭が痛んで、いやこのままではいけないと逆に気合が入った。

LINEをとりつつやっと出会えたその人はメガネで一重で前髪が重めのストライクゾーン真っ直ぐ直球ストレートのお顔をしていた。

 

こんにちは〜遅くなってすみませんでした〜!なんて適当にお話しすると全然大丈夫ですよ(ニコリ)と気さくに返してくれた。

その声がまた可愛くて可愛くてやばかった....終始萌え袖だし話し方も可愛いしよく笑うし....。

やばい、もうだいぶ好きだ。

 

顔も声もいいし趣味もあうし何より考えがめちゃくちゃ大人でニュートラルなThe Tokyozinで超好き。

周りを良い意味で気にしない、そのしなやかな強さが本当にかっこいい。

いいなぁ、大人の余裕なのかな。

 

あー好きになりたい!

ついでに好かれたい!

なんかお花のいい香りがしたからお花ちゃんと呼ぼう。

 

 

私は女性の中でもどちらかというと鼻がきく方っぽくて、本当にありきたりな話なんだけど香りで人を選ぶところがある。

だいぶ前の人も、彼も、お花ちゃんも、みんな別だけどいい香りがした。

どんなに世間一般的にいい香りだったとしても嫌な人は本当に無理だ。

タバコはもっと辛い。

 

だから自分もできるだけいい匂いがするようにと気を配っているつもり。

今はSABONのムスクのパフュームを使っていてこれがすごくいいのだけど最近鼻が慣れすぎてしまって、対策としてブルガリのオムニストのアメジストをたまに使うことにしている。

これがどちらも良くて本当に替え時が見つからないほど好きなのだ。

 

後は最近手に入れた資生堂のシナクティフの練り香水みたいなやつ。

これが本当によくてこの香りこそがスキンケアとして紹介されている。

女性ホルモンを刺激する?ような効果があるらしい?のでマッサージなんかに使うといいらしい。

ただこれ限定物でもう手に入らないので寝る前にちょっとだけつけるようにしている。

めちゃくちゃ好きだからいつか香水も買ってしまいたい。

 

 

あぁ香りが好きだ。

好きな人の香りがもっと好きだ。

どうか1番好きな香りと出会えますように。

白い朝の日のこと

 

その日はやけにはっきりと、朝がやってくるのを感じた。

暗闇の中で白い光が細くカーテンの隙間から覗いているのをぼんやりと眺めている。

珍しく昨日の夜のことを思い出せなかった。

一体どうやって寝たんだろう、お酒も飲んでいないのに記憶がないなんて。

 

ベッドサイドのスマホを手繰り寄せて画面を覗き込む。

一つの通知、彼からの、深夜、ありがとうと。

刹那、じわりじわりと蘇る記憶、鮮明に頭の中で再現される。

そうだ、またマイスリーを飲んでなんとなく寝るタイミングを逃して、そのまま気が大きくなって、彼に連絡した。

その後電話して、それで、その後。

 

ぐしゃりと前髪を握る。

彼の確信めいた言葉を思い出し、目眩がした。

ついに、ついに言われてしまった。

その確かな殺意にも似た強い意志が、私の心を貫いた。

分かっていた、その秒針の音は私にも聞こえていたから。

それでも縋り付いていた、その温かな幸せに。

私の世界をまるで変えてしまえる程のその凄まじいエネルギーに。

だからこそ捨てきれなかった、この淡い恋心と嫉妬心を。

彼はそれを全て見透かしていたんだ。

 

 

ーー俺が言えることじゃないけど、君も甘やかしてくれる人を早く見つけた方がいいよ

 

 

その言葉には刃物のような鋭さがあった。

ズプリと私の胸に差し込まれ血も溢れないほど深くまで沈んでいく。

知っているよ、そんなこと。

ずっと知っていたんだよ。

けど、でも、それだって、君は甘やかしてくれたじゃない。

私を好きだと言ってくれたじゃない。

その場の雰囲気がそうしたのは分かってる。

それでも、あの時の胸の切なさをだって忘れられないのだもの。

それだけでよかったのに、それ以上望むものなんてなかったのに。

 

あなたが誰を好きだっていい。

ただあなたの時間の僅かにでも私という存在があるのなれば、それだけでよかった。

あなたが私以外にも遊ぶ相手がいて、今週末はされを全て放り出してでも彼女の元に行っているのも、あなたの前では文句は言わなかった。

じゃあなぜ、これ以上あなたは私にどんな苦しみを強いるというの。

好きな人にそんな風に、言わせてしまった自分を、嫌いになりそうだ。

 

違う。

こんな恨みつらみはどうでもいいんだ。

ただ私は悲しい。

あなたの未来に私はいない。

私とのこの時間は過ちでしかない。

私はあなたの繋ぎとめられない。

 

私とのその女性は何が違うの?

一体どうしたら、その方に勝てるの?

私に何が足りなかった?教えて?

私にはあなたがよかった。

過ちなんて思って欲しくなかった。

あなたにとって、私はその女性の代わりだったとしても、私にとっては、あなたはあなたしかいない。

 

あなたの愛が欲しかった。

君だけだよと、ただその言葉が欲しかった。

あなたを私だけのものに、したかった。

 

 

 

想いがぐるぐると胸を巡り張り裂けそうなほど痛い。

涙が意識のないところで頬を鳴らし続けている。

好きだ、好きだとここにはいない彼の名前を呼び続ける。

分かっていた、もう限界だと、自分でも悟っていた。

彼のこれからのことを考えてしまう今、私は遊びと割り切ってしまえるほどの余裕はない。

だから、もう潮時なんだ。

潮時にしては遅すぎて、もう漕ぎ出し方も忘れてしまったかもしれない。

彼のいないこれからの海には恐怖しかない。

でも大丈夫きっと、今まで私に戻るだけだから。

 

 

 

涙は一定量出ると自動に止まるようにできているらしい。

頭がスッキリして、視界もクリアだ。

ゆっくりとカーテンをあければ、そこには美しい冬の朝。

いわし雲と澄んだ空気が清々しい。

 

握り続けていたスマホで彼とのトーク履歴を確認もせずに全て消した。

ずっと消せなくて、そのままにしてあった9月からの大量の履歴が一瞬で消えたのだ。

あーあと思った。

勿体無いとも。

 

そしてそのまま彼の連絡先を非表示に。

彼氏ができたら今度はちゃんとしたお友達になりたいからブロックはしない。

思えばずっと私たちはオトモダチのままだった。

誠実な関係にもなれず、消そうと思えばすぐに消してしまえるようなツールで仲良くなった気になっていただけ。

やっぱり私はバカなんだ。

 

 

素敵な人になろう。

彼のためじゃない、私のために私を愛す為に。

豊かな人になろう。

彼のためじゃない、私のために私として生きる為に。

きっと大丈夫、私はバカだけど、一途ないい女だから。

私のために頑張ろう。

きっと大丈夫。

 

 

白いね、真白いよ全て。

ピンと張った白い帆にキスをして、今あの美しい海へとこぎ出そう。

 

そう、それは白い朝のこと。

 

茹だる昼下がりのこと

 

10月も気づけば終わりで、夜はマフラーが欲しいほど冷えるようになった今日この頃、持て余した時間が確実に私を蝕んでいるのにまだ気づかないふりをしている。

 

1月の就活に向けて、授業を極力まで削りバイトをやめ順番万端....は良いものの結構焦っている.....

繋ぎのバイトを探そうにも今からの短期だと土日も出るようなものしかないしなんだかんだ今までのバイトより条件の良いものなんてない。

じゃあ辞めなきゃよかったんじゃ?となってきて、いやいやあのままストレスフルな生活を続けてたら確実に胃に穴が空いてた....とかぐるぐる考え続けている....。

 

とりあえず今考えているのはゆるそうな短期バイトをやりつつ、ずっとやってみたかった夜のお仕事に手を出してみたいということ。

一度経験としてやってみて、社会勉強のついでにお小遣い稼ぎしてみようと、そんな魂胆だ。

しかしまぁいつもそうだけどバイトを始めるのってエネルギーのかかることで、どんどん鬱になっていく。

しんどいなぁ、もう。

 

なんだかんだ言いつつもちゃっかり土日休みのところを探しているところからして私の意志の弱さが垣間見える。

普通に彼と遊びたいがためにあけているんだ....誘われるかも分からないのに。

 

 

この鬱の本当の原因はちゃんと分かっている。

彼が今週末地元に帰るから、その話を聞いてしまったからだ。

そりゃあ好きな人が他でよろしくやってるなんて状況、普通じゃ考えられないし、逆によく耐えてるよって感じだ。

そう、だから夜に電話をしてくれないのも、LINEがそっけないのも、私の考えすぎとかじゃなくて、彼女との週末を楽しみにアレコレ準備してるからに決まっているんだ。

 

そんな風に察してしまったら、今度はもっともっと悲しいことを想像してしまって今本当に辛い。

クリスマスはきっと丁度連休になるから地元に帰ってイチャイチャして私に相談してたプレゼントをするんだろうな。

コフレかな、指輪かな、あぁ羨ましいな。

とびっきりいいレストランに行ってそのままホテルに行って車でお家まで送ってまだ帰りたくないとかなんとか言って、それはそれは楽しいことをするんだろうな。

私とは違って全部彼持ちで、彼女に何もかも捧げてすがって。

なんだよこの差は辛すぎだろバーニー。

死にてぇわ、なんでこんなこと考えなきゃいけないんだよ辛い。

こんな無駄な時間あっちゃダメだろ、もっと自分で自分を楽しませなきゃ。

って言っても今集中できるようなことはなくて、無気力で、お酒を飲んでは吐いて胃が死んで。

宙ぶらりんで気持ち悪い状態なのに頭の中はフルで回転してる。

辛い、ヒートしそうだ。

 

熱い。

身体は自分でも驚くほど冷たいのに、なぜこんなに熱いんだろう。

こんな風にしていると時々彼の言葉が蘇る。

 

ーーまぁもう少しで振られる予定だから

 

 

振られる、予定だから。

降る予定は、ない。

そういう意味があの言葉には確かにあったと思う。

現実は言葉が発せなくなるほど残酷で、私の心はもう限界を迎えようとしている。

楽しいばかりだったら、よかったのに。

どうしてこんな、醜い私になっていくのだろう。

 

いつもだったらここで悲しみを怒りに変えて、絶対にかの女に勝るほどの美しさと洗練さを手に入れてやると躍起になるのに、今ではそれすら虚しいと思えてしまう。

美しくなったところで、だからどうだと言うのだ。

アイラインも引けないような女に、今の自分ですら勝てないままだというのに。

 

あぁ悲しい。

熱に犯された頭が悲鳴をあげて、辛い辛いと叫んでいる。

私に何ができる、一体何なら必死になれる。

彼を忘れられる時間が欲しい。

 

あぁそれは茹だる昼下がりのことである。