大事にされるってどんなこと
肌寒い日々から一転、まるで小春日和な今日。
寝不足の私にとってはまぶしいばかりだ。
昨日は初バイトを2件こなしてきた。
朝私にしては早起きして満員電車に飛び乗りお昼頃までずっとオフィスを周りお弁当を売りまくった。
日頃は中々歩かないような都会をウロウロできるし気楽で楽しい。
しかし台車を押すので腰が痛くなるし結構足にくる。
まぁいいダイエットだと思い頑張ったら午前。
それが終わって家に帰って少し寝て、また夜のバイトへ。
夜は客層のいい所謂キャバクラ。
初めてのことで大変だったけどなんとかなった、と思うようにしよう。
そうしないとメンタルから先に死ぬ。
終電前には返してもらったけれど電車が遅延していたので結局終電を逃す。
深夜バスがあるのでそれに乗ることに。
そのことをあの日からほぼずっとLINEを続けているキャットに愚痴ると「じゃあ(うちに)くる?」という。
即座に「こない」と返した私をどうか褒めてほしい。
本当は全部放り投げて会いに行きたかったけどさすがに授業をサボりすぎてるし、メイクポーチも何も持ってきていなかったから気合いで断ったんだ。
まぁもっと本音を言ってしまえば、彼にもっと求められたいというか、大事にされたいというか、ちゃんと時間を作って会ってほしいから明日にしてほしいななんて思ったからで。
「授業だから無理なの、折角なのにごめん、いつも金曜日の深夜だから寂しい、また今度ちゃんと時間をとってほしい」と順を追って本音を伝えたらまた謝罪がきた。
違う、私はそんな言葉が欲しいんじゃない。
じゃあいついつはどう?ってそういう確かな約束が欲しいだけなのに。
一般的にセフレはさ、突発的に会うばかりだからいつって約束をしないものなんだってさ。
本当そうだよね、悲しみが深い。
そんなこんなで2時くらいに帰宅して、朝練もしなきゃだったから7時に起きて、そのままさっきまで授業だったから今めちゃくちゃ眠いんだけどなんとなく家に帰りたくなくて喫茶店でコーヒーをすすっている。
いつか渋谷で香水を試しにつけた時の残り香がコートについていてそれがまた煩わしくもある。
ユニセックスなムスクの香りだ。
なんとなくだけど私以外の誰かにつきまとわれているような、そんな感じがする。
でも、今はそれぐらいがちょうどいいのかもしれない。
誰か違う男の人に抱かれているような心地だから、彼じゃなくても大丈夫だとそう思える気もする。
香りと、コーヒーと、ケーキと、とびきりおしゃれな小説、それからセンスのいい音楽が私をトリップさせてくれる。
タバコや薬なんかしなくても最高に気持ちよくなれる、最高。
あーいい趣味見つけたかも、よかった。
彼がいなくても、ちゃんと楽しくなれるんじゃん。
昨日も今日も彼が、今日の夜、誘ってくれたらいいのに、なんてことをずっと考えていた。
バカらしいけど、少しでも大事に思ってくれるなら、私を優先して欲しいなんて、欲深いことで頭をいっぱいにしていた。
でもまぁLINEで地元から遊びにきてる先輩と会ってくるというので、なるほどそれは大事にしなきゃと思った。
理解できても胸は痛む。
土日はきっと、彼といられると頭のどこかでずっと思っていた。
都合のいい女にはなりたくない。
求め、求められる快感を仮初ではあるけれど味わってしまったから。
どうか大事にしてほしいと執拗に願ってしまう。
けれど大事にする、大事にされるってどんなことなんだろう。
実際に、愛する人に大事にされた覚えのないわたしにとってそれは結構な難問だ。
お金をかけて、全ての予定を相手の為にキャンルしたりして、お姫様扱いする....感じ?
いやそれって私が一番嫌なやつだ。
自分のために相手の人生をおかしくしてしまうの?それって嬉しいのか?
もっと違う意味で大事にされるって感覚を味わいたいな....
そんな風に鬱々と考えている間にコーヒーは冷め、冷房で体は冷え切ってしまった。
冷えと睡魔と空腹は人をだめにするからな、そろそろ出よう。
彼に授業をサボっていると話をしたら、しっかりしろと言われた。
お前に言われたくないと思ったが、あぁでも確かにと思った。
自分の為に相手の大切なものを犠牲にしておかしくさせるのは心地よくないよな。
分かるよ、私だってそうだもん。
やっぱりさ、相性は悪くないんだよ私たち。
ただタイミングが悪かっただけなんだ。
もう少し早くあなたに出会えていたなら、きっともっと幸せになれたのにね。
なんて、私の中の彼に言葉をなげれば、きっと悲しそうな顔をしてまた「ごめんね」と言うんだ。
ごめんね?
本当にあなたはずるいよ。